【禁じられた遊び】




悪い事の自覚はあった。
けどその理由はどうやっても分からなかった。

神に反する。
くだらない情はいたずらに心を乱す。

オトナたちは色々なことをオレたちに吹き込んだけれど、
納得のいく言葉には何一つなく


ただ禁じられてる、の一言で俺たちは引き裂かれた。






「何か今、物凄い王子サマって気分」


ふわりと胸に浮かんだ言葉。迷いもしないで吐き出して、
真っ黒なドアに投げつける。分厚くたって所詮はただの
木にすぎないドアはオレの声を引き留めることが出来な
い。
証拠に、ドアの反対側のオレの頭の辺り、羽毛の枕がべ
しゃんと投げつけられた。ここにぶら下がる、南京錠が
なかったらきっとオレの顔に直撃したに違いない。



「てめぇ、くだらねぇこと言ってると只じゃおかねぇぞ」

「あら?ケガって聞いたのに、元気じゃん」

「かすり傷だ。それぐれぇ分かってんだろ」

「さすが。こういうのは鋭い」



ドスのきいた声はいつもオレを安心させる。会えない、
顔がみたいってのはいつも思うケド。この薄いドアが鉄
壁の要塞ってのはお互いに知っていること。
破ってしまうのは簡単。でも次は破れないほど確実な隔
たりが生まれてしまうから。



「…仕事はどうした?」

「あいにく、全部調査中。そんでもってジジィも外出中。
5年がかりの嫌がらせも遂にはヤキが回ったみてぇさ」

「…許可は」

「なし!今だって書庫に行く振りして寄っただけさ」



欲張りは身を滅ぼす。
昔から言われてきた言葉を改めて実感する。

始まりはオママゴトみたいな恋だった。
神に背きたかったわけでもなく、
弱みを作ろうとしたわけでもない。
オレにもユウにも寄り添える人は誰一人としていなくて、
いつの間にか立ってもいられないくらいに傷付いていた。



「おい」

「何?」

「もうオレに会いに来んのやめろ」



ごつ、とぶつかる振動は確かに伝わった。けれどももち
ろん温度はかけらもすりぬけて伝わりはしない。
利害関係から始まった、こんなのを恋って呼んだら神サ
マは怒るんだろうか。心に開いた風を埋めたくて重ねた
の行為が罪ならばオレたちは背負ったモノの重さに潰さ
れるしかたなかったのだろうか。


「…お前はいつくたばるかも分からねぇ俺とは違う。見
つかったらなんて言い訳するつもりだ」




ユウはあの人の行方と残りの未来
オレはブックマンとしての未来
加えて世界を守るという大役、と
子ども一人を簡単に潰せるようなモノの下でオレたちは
どうすればよかったのか



「ありゃ?珍しー、ユウが他人の心配なんて」

「どういう意味だコラ」

「心配しちゃうくらいオレが好きって?いやー照れちゃ
うさー」

「てっめぇ…ッふざけたこと言ってっと殺すぞ!!」

「オレなら大丈夫だよ、ユウ」



駄目だと繰り返すオトナは結局納得のいく答えをくれな
かった。オトナの何ひとつも分からないオレたちに分か
ったことといえばドアの向こうにいるお互いカミサマの
ことくらい。



「隠れてイケナイ事すんのは得意分野さ」



オママゴトの間に合わせから生まれたカミサマは奇跡も
起こさない。
悟りも開いてないし、世界も救わない

気は短くて、乱暴で、ほんの少し優しいだけ
気まぐれで泣き虫で、明るく笑ってみせるだけ


でもいいんだ
大きなカミサマはきっとオトナたちと違って後でごめん
なさいっていえばきっと許して来れるから。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
教団に引き裂かれてもこっそり会ってる二人。
あなたは僕を救ったただひとりの神サマ









back