ひとりの成熟した男で
僕の恋人を自称する人間で
イタリアのマフィアのボスで

他にも健康だったり馬だったり、重なる要素は余り有るのだから
それはやっぱり自然なことなんだろう



「子供欲しいなぁ」



相手の年齢を考慮にいれての発言かは別にしても













【子作りマニュアル】









文字通り燃え上がるような行為をしてたのだから、熱いのは当た
り前だ。けど、出来る限りと肌を寄せて横たわるのはやっぱり気
持ちがいいと思う。
乱れたままのシーツにぞんざいに身体を投げ出して、距離を縮め
て相手の気配に近づく以外のことをすべていい加減にする。

群れるのは相変わらず大嫌いだが、最近は自分への言い訳も上手
くなってきたように感じる。

絡みつく腕をどけるのが面倒くさくて放っておいたら、呟くよ
うに、ディーノが口にした言葉が耳の裏から染み込んできた。



「男の子と女の子がひとりずつ」

「何なの唐突に」

「だから子供欲しいって、なんとなく今すっげえ思ったから」



本当に終わったばかりで、やっと息が整ったくらいで、もちろん
僕もそしてディーノも裸のまま。いつもだけど、してしまう前は
すべてにおいて目もあてられないのに、ひと度終えてしまえば
なんの躊躇いもなく視線を合わせられる。
躍動する馬を描いた左腕が彼の半分くらいしかない僕の肩を巻き
込んで、広い胸板に閉じ込めてしまうのまで確認できる。
女の子なら絶対恭にそっくりだととろけた顔をする人は行為の前
にも後も関係なく、つむじから爪先まで嬉しそうに眺めているの
を知っているから、釈然としないのだけど



「中身も僕そっくりかもね」

「最高に可愛いじゃねぇか」

「あなたに似ないでドジじゃない」



嫌味と気づいたのか、そもそも理解できたのか怪しいけど
ディーノは笑ってまたキスをくれた。




昨日、ディーノが久しぶりに来日した。
マフィアのボスなんて忙しい身でありながらわざわざ日本までく
るのだから勿論仕事が理由。それでも、一日中仕事だとは言わな
い。
彼の中で僕は恋人なわけだから、連絡は来るし、恋人なら久しぶ
りに顔を合わせればセックスぐらいする。

と、言うか昨夜は本当に凄かったと思う。
色んな意味で



「…つけてなかったら絶対妊娠してた…」

「心配すんな、そっちじゃドジはしねぇから」

「あなたさっきから言ってること矛盾してない?」


子供を作るのならまず正しい順序を踏むこと。
いまどき小学生だってわかる。

腕の中から抜け出してディーノの上に乗り上げた。さっきまで使
ってたソレの少し上、ヘソの辺りに跨った。濡れたまま行為の名
残を残した秘部が彼の体温に反応してウズく。



「子供、欲しいんでしょ?」

「そりゃな、オレと恭の子供なら二人でも三人でも」

「じゃ必要ないじゃない」

「何が」

「言わせたいの?」



あれ、と指を指せばその先にあるものを確認して苦笑いをする。
その顔がなんとなくムカついて、脇腹を叩いてやった。気持ち
の良い音がしたからそれなりに痛かったと思う。



「だってお前まだ15じゃねぇか。子ども相手に子供作れるかよ」

「その子ども相手に一晩で一箱使ったくせに、今更すぎない?」

「しょ、しょうがねぇだろ!久しぶりだったんだから」

「しょうがない、ね」



久しぶりだったのは僕もなんだけど、言いかけてのみこんだ。
人のこと子ども扱いするくせに、変な所だけ子どもくさい。
それが性格や外見だけならまだしも、こんなところまでだと
さすがにため息が漏れる。
あれだけしたのに、身体の上から見下ろすディーノに疲労らしき
ものは見えない。初めて見る構図にそういえばこんな体勢でも出
来たななんて柄にもないことを考えたりした。



「きょうや」



手を広げて、来いと呼ぶ声を聞こえないふりして背中を向けると
力を無くしたディーノのそれを手に取った。
他に見たことがないから比べようがないのだけど、小さいという
ことは絶対ない。それどころか片手で支えるのは心もとないくら
いで。両手に掴み直し指先でこねてみると手の中でゆっくり脈動
を上げ始め、形を変えていくのが分かる。

僕のナカに入るためのカタチ

キケン、アンゼン
そんなものに関係なくディーノのそれが僕に直接注がれたことは
ない。
だから僕は彼の昇りつめた瞬間を薄いゴムの膜越しでしか感じた
ことがない。僕に向けられるあり余るほどの情欲の証をすべて受
け止められたら



どうしよう、今もの凄く

ディーノが、欲しい





「そこまで」

「ひゃ…ッ」



腰を浮かせた瞬間、抱きこむように後ろから伸びた両手が胸を
鷲掴みにした。タイミングが良いのか悪いのか。再び膝が折れて
ディーノの上に座りこんだ。


「ディ…ノッ」


「今日はもう駄目。イタズラしてもゴムがねぇから挿入れて
やれねぇよ」

「じゃ…っんで、こんな…、あ」



胸の愛撫は好きだけど、こんな風に粗い手のひらに揉みしだ
かられることはなかったから、柔く形をかえられたり乳首を
かすめるたびに濡れたな声が。
受け入れるべき場所からもまた愛液が溢れてしまってるから
ディーノだって分かってるはずだ。



「ね…ッ出さなくて、いい…から」



挿入れて欲しい。
あなたが困った顔をするのは知ってる。
それだってホントに僕のことを思ってだ

だけどもう僕のカラダは
あなたとひとつにならなければとろけてしまえない
悔しいけど、そんなふうになってしまった。


ディーノはやっぱり困った顔で笑った。
それでもしょうがねぇな、なんて言いながら僕をうつ伏せに
倒して言葉に似合わずスタンバイOKな自身をゆっくり挿入した。



「…っこども」

「ん?」

「僕、女の子が先がいい…ッ」



内側から溶けて高まる熱に意識を食い潰される寸前、無理矢理
言葉にして吐き出すと彼は一瞬面を食らったような顔をして、
もう三年くらいしたら、と約束してくれた。



今はまだ、僕を独り占めがいいらしい。








End.








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