サヨナラ ちっぽけな恋心 オレは気付いてしまったから 足枷になんかなりたくないから オレは君を置いていくよ だけど大丈夫、 大丈夫だから……── 【Your Lovingly】 出会って何日目なのか、とかって覚えてんのかな。 職業柄か、オレは逆に忘れらんないけど、別に嫌々覚えて いるわけでもない。 キレイなユウの青を見るたびドキドキして見惚れるような ユウの黒を人混みで見つけるたび嬉しくなって いつからか大好きになった。 ホントに、ホントに、 ユウはオレの全部になった。 「ユウ」 「あ?」 灯りをおとした部屋の中。狭いベッドの上で肌を合わせる 相手は勿論ユウ。任務、任務でお互いにすれ違っていたか ら、こうすんのはホント久しぶり。 元はオレのワガママから始まった関係だけど、ユウはあん な性格だから。 もしかしたら脈アリ?なんてバカなこと考えた時期もあっ たりした。大半はすぐに吹っ飛んだけど 「どうしたんさぁ、コレ」 指先でそっと触れたのは日焼けのない、白い首筋。そこに は控え目に咲かされた赤い華がひとつ。 オレが付けたヤツじゃないってのはすぐに分かった。 だって一番最後にシたのは半年以上前だから、とっくに消 えてるはずだ。その言葉に、髪をおろして女の子みたいな 容貌になったユウがめんどくさそうに体を半分起こして。 『どこ』の『何』かを確かめると、すぐにまた『いつも』 の舌打ち。 「…モヤシだな」 「モヤシ?前の任務で収穫でもしたん?」 「んなワケあるかボケが。新人のエクソシストだ」 新人の、 ってことは食物のほうじゃなくて人名。 つまりは人間ってコト。 「えー、モヤシってドコの人よ」 「本名はアレン=ウォーカーだ。…が、モヤシで十分だろ あんな奴」 イヤな予感。って言っても、オレが一方的に感じてるだけ で、どうでもいい だけど重要なモノ ユウの表情はいつもと同じ不機嫌で、目に見える変化なん てない。 「どんな奴なんさ」 「甘ちゃんで口だけ一丁前のすぐ泣くムカつくガキだ」 それでも、いつもとは違う『何か』に気付けてしまったの はその付き合いの長さ故。自然の中の不自然に気付いてし しまうほど、オレはユウを知ってしまっていたから。 「俺のやることにいちいち口出しやがって」 証拠に、ホラ。 いつだって真っ直ぐな視線が今日はオレを見てくれない。 「でも、寝たんだろ?その──モヤシってヤツと」 空気がやたらピリピリして、自分の言った言葉がいやに重く 聞こえた。言わなきゃよかったと少しだけ思ったけどそうも いかないんだって自分を慰めた。 オレの『イヤな予感』は多分当たってる。 反面、そんなワケねぇってカッコ悪く足掻くオレもいて。 目を伏せたまま、眠ってるんじゃないかと思うくらい静かな ユウの髪を撫でてると、青い瞳は少しだけ姿を見せる。 そんで、一言。 とても短く「好きだと言われた」って 「ふ〜ん…ユウは?好きなん?」 「……嫌い…じゃねぇ」 きっと、気付いてしまったからこそ オレは怖いんだ。 何度も接吻けたこの口唇が、今日この場で告げるのは、 今のオレたちに対する『オワカレ』だから。 あんなトコにアトがあったのは多分ワザと。 元々恋人でも何でもない関係だし、 オレは一つのモノに執着するタイプじゃないから。 ユウは、これで全部を悟ってくれる、って思ったんだろう。 「ユウが恋人、ねぇ…コムイとか知ってんの?」 「…なんでわざわざ話す必要があんだよ」 「だって、良い反応してくれそうじゃん?」 大丈夫、大丈夫だよ、ユウ。 知らない所で変わってしまった君にちょっとだけ涙が出そ うになったけど、ちゃんと君が望む通りに出来てるから きちんと笑えてるかわっかんないけど、声はいつもの通り。 軽々しいまま、少しも震えてないから 「ラビ」 急に真剣味をおびた声が呼ぶ名前は、オレにとっては2つ 目 君が知るはずもないけどこの名前を選んだのは、その頃ユウ がよく、オレを「ウサギ」って呼んでたから。 遠く離れて、 会えなくなっても、 名前を呼ばれるたびに君のことを思い出せるから 「テメェの方もくたばる前に手ェ打っとけよ」 「あ、例の桃色事情?それならとっくに不発したさぁ」 「…フラレたか?」 「結果的には」 誰、と言わず。存在だけを告げてあった思い人はもういない。 オレの知らない所で居場所を見つけて、結局片想いに終わっ たから。 もう少しだけオレに勇気があったら、と思わなくもないけれど 言ったところで仕方ない。 「ま、思い募るだけならタダだし?幸せを祈っとくさ」 「…そうか」 全てを拒絶する君が笑ってくれた時、ドキドキして 強がりだった君がオレの前で泣いた時、なんだかとても悲しく なって 気が付けば大好きだった。 「可哀想って思った?」 ホントに、ホントに、大切だった。 「なら、最後に慰めて?ユウ」 だから、 サヨナラ ちっぽけな恋心 オレは気付いてしまったから やっと恋をみつけた彼の足枷にはなりたくないから オレは君を置いていくよ でも 大丈夫 だけど 大丈夫 オレは君を愛してるから 今は君のために笑ってやることさえ出来ない、弱いオレだけど いつか立ち上がったら、 きっと君の思いを守るから。 きっと、ずっと君を愛してくから。 (これからもう、抱きしめることのない体温は、なんでかいつ もより優しくて) (ぎゅっと力いっぱい抱きしめると、細い指が髪を撫でてくれ た) (不器用な彼なりの、精一杯の慰めだったのかもしれない) 友だちになってかも いつか憎むべきことを求められても きっと君を愛して そして笑うから 「っ…ぅう…ッ」 だから 今だけは 涙を止めることも出来ない ちっぽけでワガママな恋を愛してやって。 End. |